――サダメン!



咄嗟に後を追いかけたが、会場内に入ると彼は既に席に座ってしまっていた。


いきなり隣に座るのも不自然だし、理由もなければ、そんな勇気もない。


迷ったあげく、日向子は仕方無しに彼の斜め後ろに陣取ってチャンスを待つことにした。


彼はというと一席ずつ置いてある資料をパラパラと無造作に捲って目を通している。



細くて長いしなやかな指


身長は180は超えているだろう


キリッとした細い眉毛に伸びた鼻


彫が深いのにくどくない顔立ち



――完璧だ…



――彼が運命の男に間違いない。



――イニシャルがT·Yでありますように…



そう願いながら、入社式の開始を待った。



「それでは定刻となりましたので
 只今から2012年度新入社式を
 始めさせていただきます」


司会のアナウンスが流れ、壇上に目をやると重役と思しき方達がいつのまにか着席していた。