日向子が入社した会社は子供服製造メーカーの大手だ。
全国展開で店舗数は1500、
正社員の数も5000人を超える。
今年の新入社員だけでも100人強だ。
京王線の笹塚駅前に立つ自社ビルは2年前に新築されたばかりで一際目立っていた。
「ここで働くのかぁ…」
と18階建てのビルを真下から見上げた。
そんな日向子を物珍しそうに一瞥してはビルの中へと入っていくサラリーマン達。
日向子もハッと我に返ると、その人波に続いて中へと入った。
日向子の会社は8階から12階までで、下はテナントとして貸し出しており、上階5フロアはホテルになっている。
8階の受付で指示を受けて会場となる大会議室前まで行くと、新入社員はほぼ全員が集まっていた。
各々緊張の面持ちで入社式の開始を待っている。
日向子は端の壁際に陣取ると早速運命の男を探し始めた。
まずは赤いネクタイだ。
日向子の鋭い視線が男子の胸元を狙う。
違う……
違う……
違う……
赤いネクタイはどこにも見当たらない。
焦り始めたまさにその時だった。
いた!

