誰かと過ごせば、気も紛れるかもしれない。
気心知れてる仲なら尚更だ。


腐れ縁は鬱陶しくもあり、有難さも同居してくれていると日向子は感謝した。



新宿駅の南口で待ってると伝えて、日向子はようやくベンチから立ち上がった。




辺りは薄暗くなりはじめていた。
春先とはいえ肌寒く、冷気が身にしみる。


ふと右腕に物足りなさを感じた。
いつも当たり前に感じていた貴文の肌の温もりがない。



――決して独りになったからじゃない



――もうすぐ運命の男がここに寄り添うはずだ




日向子はそう自分に言い聞かせてショールを纏うと足早に新宿へと向かった。