「あいつが面食らった顔、初めてみたしな」

「えーと…知り合い?」

「おー。あいつは神崎恭汰、中学から部活もクラスも一緒」

「え、かわいそー」

心底可哀想だと思って哀れみの目で黒髪くんをみると、クス、と笑われた。

「え、笑う要素あった?」

「恭汰毛嫌いする女子、初めて見た。今までの女はだいたい恭汰にいい態度ばっか取ってたから新鮮…」

「いや、あんなの恭汰じゃなくてクズ汰だから!不躾だし!」

そう勢いよくいうと今度こそ黒髪くんは吹き出した。

私、真剣に言ったつもりだったんだけど…。

「やっぱお前面白いわ。名前は?」

「佐倉蒼依、です」

「そ。俺、内田和樹」

お前おもしれーから気に入った、そう呟いた内田くんはふわりと髪を靡かせて教室を出ていった。