「ほら、またあの子来ているよ。」 「ホント、いい加減にして欲しいんだけど…。」 「こっちまでトバッチリ受けそうで、迷惑なんだけど。」 コソコソと話す看護師さんの声なんか聞こえないフリ。 何食わぬ顔して。 ナースステーションのイスに座って。 机に頬杖つきながら。 口をとがらせて、天井を見上げていた。 「紗羽じゃないか?」 聞きなれた声にキラリと目を輝かせて。 「お兄ちゃん。」 さっきまでの仏頂面(ぶっちょうづら)なんかじゃなくて。 最高の笑顔を浮かべて。 元気よく振り返った。