「あれは、森崎の狙っている人。携帯買いに行って知り合ったんだけど、ちょうど施設の子の誕生日に何をあげていいか分からなくて、一緒に来てもらっただけ。」

「この間、デートだったんでしょ?」

「お礼だよ。説明する必要ないと思ったから言わなかった。」

彼女になる人じゃなかったんだ…。

重りが取れたみたいに、胸の中がポワンポワンしてきた。

「だって、彼女になるかもって。」

まだ素直になれない。

「冗談だよ。」

「冗談て…」

「オレはいつでも綾瀬の味方でいるから。」

にっこりと笑ってくれたその笑顔。

うれしくて仕方なかった。

「でも…あたしは…」

どうしても霧生くんのことが頭から離れなくて。

うれしいけど、どうしていいか分からない。

繋がれた手を見ながら、チラッと海翔の背中を見た。

ダメだ…。

心の中は複雑だけど。

足取りまでフワフワしちゃって。

顔がニヤけっぱなしでマンションに帰った。