「まさか、オレと一緒に住んでいるのがバレて、フラれたのか?」

「違う……それだったら、まだよかった。」

「じゃあ…まさか、刑務所の中!?」

少し驚いたかのように、眉をゆがめた。

小さく首を横に振りながら

「……事故で死んじゃったんだ。」

ニッコリ笑ったはずなのに。

口元が引きつって痛いよ。

海翔も言葉に出来ないような神妙な顔をして。

「それは…悪かったな。」

重たそうに口を開いた。

「いいの。もう、忘れなきゃいけない人なんだもん。」

そう言いながら、今度はあたしが海翔の頭をクシャッとなでた。

「……ムリして忘れなくてもいい。忘れるときには、隣にオレがいてもいいかな?」

海翔から繋いでくれた手。

言葉にならなかった。

嬉しくて海翔に顔なんか見せられない。

だけど。

「あの女の人に悪いし…」

…痛いよ。

心が痛い。

自分で言っておきながら、心が痛くなっている。

霧生くんと重ねているだけ。

こんな時に頭の中を何回もお姉さんの言葉がグルグル回っている。

心が潰れそうなくらいに痛い。

「へぇ~、意外だった。綾瀬も遠慮とかするんだ。」

「遠慮って…普通でしょ?あたしと関わって、女の人に愛想つかされても知らないから。どうせ、いつものお人よしのつもりでしょ?」

「お人よしで、こんな所まで迎えに来るかよ。」

「お人よしだから迎えに来るんでしょ?」

「バーカ。プライベートでこんな所に来て、まして女の子と一緒ですなんて、職業柄ヤバイんだよ。そこまで危ない橋渡ってまで、お人好しで迎えになんかこられないだろ?」

怒っているの?

呆れているの?

渋い顔されているのに、嬉しいのはなんで?

「じゃあ、なんできたの?」

「綾瀬のことだから、顔を合わせづらくて帰ってこないと思ったから。」

「それだけ?」

「大事な同居人だろ?」

同居人…

その言葉が、重たいくらい胸を押しつぶしていく。

苦しくて

重くて

「17歳と同居なんかしていると、あの女の人に嫌われるよ?」

迎えに来てくれたのが嬉しいのに。

素直に喜べない。