次の日には帰ると、海翔が出かけようとしていた。

「また、朝帰りですか?」

大きなため息をつきながら、あきれた顔を浮かべる。。

そんな海翔の顔なんか気にしない。

「おはようございます。」

だって、ちょっぴり機嫌がいいから。

ミュウも見つかりそうだし。

尚吾が少し元気になってくれたから。

だけど、海翔の反応は驚いているとかじゃなくて。

むしろ、眉にシワを刻みながら。

「やっぱり…男か。」

いきなり襟元をつかんだ。

「なっ…なに!?」

あたし、何か変なかっこうしてる?

それとも、何かついているとか?

「キスマークが付いているぞ。」

深いため息をつきながら、パッと襟元から手を離した。

それと同時に。

慌てて首元を手で押さえた。

昨日の尚吾のだ。

どうしよう…

変に誤解するよね?

まさか、あんなのでキスマークつくなんて思わなかったから。

必死に言葉を探して。

「関係ないじゃん。海翔だって、女とヤることヤってんでしょ。」

プイッとそっぽを向いた。

思わず出たそれが、精一杯の答えだった。

「やっていません。そんな暇はないです。」

「なんか、いつもあたしが暇みたいでムカツク。」

「暇だろ?男の所に泊まり歩いているだけで。」

「海翔があたしの何を知っているの?あたしにだって、色々と事情があるんだけど。」

ムッと口をとがらせた。

「ほ~う。その事情とやらを聞きたいですな。」

ジッとのぞき込んできた顔。

「…言えない。」

とっさに目をそらした。

言えるはずなんかない。

尚吾の話をするってことは。

あたしの…

本当のあたしを話さなきゃいけなくて。

ギュッと胸が苦しくなる。