10分もしないうちに、お兄ちゃんが部屋に来た。 「ごめんな。待たせて。」 そう言いながらベッドに座るあたしの隣に座った。 「大丈夫。…忙しくないの?」 一生懸命、言葉を探して。 会話らしいモノをなんとかしてる。 「今日は、予定ないから。」 優しく頭をなでてくれるお兄ちゃん。 その手が大きくて。 温かくて。 …もしかしたら、この手の温もりが最後かもしれない。 緊張だけじゃない。 この先を想像した悲しさで、胃の奥から込み上げそうな痛みが涙となりそうで。 それをグッとこらえる。