尚吾達のいるビルに来ていた。
ドアを開けると、珍しくいつものメンバーが揃っている。
だけど、ミュウの姿はやっぱりなくて。
「メールしてみたけど、やっぱり返事がこないよ。」
ソファで毛布を頭までスッポリ被って寝ている尚吾に投げかけた。
なのに。
「そうか…。」
ため息まじりに秀が答えた。
ソファの前にしゃがみ込むと、毛布をめくり尚吾の体を抱き起こしてそっと抱きしめた。
尚吾はあたしの体に寄りかかると、寝惚けていた目を覚ました。
「悪いな。」
かすれた声で、ボソリとつぶやいた。
「ちゃんと寝たの?」
「ああ、少しだけ。」
「寝ないとダメだよ。」
心配そうに、尚吾の顔をのぞき込んだ。
「大丈夫だ。」
ギュッと力強くあたしの腕をつかんだのに。
視線は悲しそうにうつむいていた。
その視線が、チクリと胸を痛めた。
「…尚吾。」
これ以上の言葉がでない。
そっとあたしの肩に寄り添うと。
「…男の臭いがする。」
耳元で囁いた。
「え!?」
何をいきなり?
この状況で?
どうしてそんなことを言うの?
お姉さんから、海翔のこと何か聞いてるとか?
もしかして、ミュウが失踪したのに。
あたしだけ男と楽しんでいるって勘違いしているのかな?
「気のせいでしょ?」
フッと鼻で笑うしかなかった。
「お仕置き。」
甘い言葉を耳にかけると同時に、ギュッとあたしの体を抱きしめた。
尚吾がクスリと笑うと、カプッと軽くあたしの首元を噛んだ。
ピリリにも似た感覚が一瞬、尚吾の唇が当てられた首元に走った。
「ちょっと!!」
慌てて尚吾を払いのけようとしたのに。
スッと自分から体を引き離すと。
小さくベーッと舌を出して口元をゆるめた。
だけど、ゆるんだ口元とは反対に。
尚吾の顔は悲しそうなまま。
必死に元気そうに見せているのが、痛いくらい胸の中に伝わってくる。
それを察したかのように。
「エロイ光景だなぁ。」
丘芹が顔に手を当てながら、冗談まじりに言った。