「お兄ちゃんて言っても、親戚なんだ。音信不通でみんな心配していて。」

慌てて取りつくろうと

「…そうなんだ。」

ちょっと困った顔をして、チラッと肩をつかんだ手を見た。

「あっ…ごめん。」

パッと手を離すと、ミュウはホッと肩の力を抜いた。

「本当に、チョットしか知らないよ?なんか、唯ちゃんは昔…人を殺したとか言ってるの聞いた。」

「誰から聞いた!?」

思わず、声が大きくなる。

「誰って。いつも唯ちゃんと一緒の男の人達。その人達が話していたの。」

オレの頭の中は、真っ白になった。

綾瀬唯が殺人…!?

でも、警察のデータに綾瀬唯の記録はない。

指名手配なら、確実に何らかのデータがあるはず。

もしかして…偽名?

いや、少年院から出てきて名前を変えた?

「ミュウちゃん、他に何か知っている?」

ミュウは、ちょっと考えて

「他に何かって…親戚なんだよね?」

不思議そうにミュウが覗き込む。

ドキッとしたのは一瞬。

「うん。親戚って言っても遠い親戚だし。オレ自身があんまり親しいわけじゃないから。」

適当にごまかせたか?

ドキ!!ドキ!!

冷や汗を握りしめるような緊張が脈を打っている。

「そっか…確か出身が隣の県で、お兄ちゃんがいるんだよね?あと、実家は大きな病院なんでしょ?」

「そうなんだよ。ありがとう。」

綾瀬唯が見えてきた気がしたが、また分からなくなった。

人を殺した…。

一体、綾瀬唯の過去って。

でも、今日は大収穫だった。

ツルんでる5人の男とたまり場。

少しだけ、過去と実家と。

霧の中にほんの少し、光が差した気がした。