ない。
綾瀬唯の靴が。
どこか安心しているくせに。
自分でも不思議なくらい、いないことの方が心が痛んだ。
その痛みの理由なんて分からない。
ただ…疲れてボーっとした頭の中に、ヒトツの疑問がドンと居座っている。
『綾瀬唯ってナニモノ?』
前に聞こうとしたが、何も答えになっていなかった。
どうして、ここまで自分を隠すのか?
何を知られたくないんだ?
警察のデータには綾瀬唯はいなかった。
単なる家出少女と思いたい。
確か再会したあの日。
綾瀬唯は自分には帰るところはないと言っていた。
じゃあ、ここに帰って来ない時はどこにいるんだ?
今日は夜勤明けで明日は休み。
まずは、綾瀬唯の交友関係でも調べてみるか。
向こうが話さないなら。
こっちが調べるまでだ。
変なことに巻き込まれて、オレと住んでいる?って、言えるかは微妙だけど。
この生活がバレなければいい。
そう考えたらドッと力が抜けて、一気に睡魔が降臨してきた。
どれくらい寝たのか。
目が覚めたときは、外は真っ暗だった。
枕元の時計を見ると、午後7時を過ぎている。
寝ボケながら綾瀬唯のベッドを見ると、やっぱり帰って来た様子はない。
気だるい体を起こしシャワーを浴びると、やっと頭も体も目覚めた。
体は自然と出かける準備をしていた。
昨日、補導されてきた子達の溜り場に行ってみよう。
アイツ等と補導されてきた所。
そこに行けば、何か手がかりがあるかもしれない。
今はそれしか情報がないからな。
足早に家を出ると、そのまま『G』に向かった。
一般客を装い一歩足を踏み入れて驚愕した。



