『該当者なし。』
ホッと胸をなで下ろす。
肩から一気に力が抜けた。
予想通り、ただの家出少女か…。
どこか安心したまま。
勤務が終わり、署を出た時の朝焼けが目にしみた。
大きく伸びをすると、夜勤明けなのにもかかわらず足取りが軽い。
家に着くなり、玄関を開けてまたビックリした。
また玄関で寝る綾瀬唯。
「おい、ここで寝るなよ。カゼひくぞ。」
ポンと体を叩きながら。
綾瀬唯を起こした。
「花火…。」
ムクッと起き上がると。
ボソッと一言つぶやいた。
寝ぼけているな。
「今度ね。」
そう言って抱き上げるとベッドに寝かせ、自分も眠りについた。
昼過ぎに目が覚めると
「ナニやってんだよ!!」
目の前の状況に慌てて声を荒げた。
「お風呂入っていた。」
平然と答える。
その姿は、バスタオル1枚で立っていた。
「それは分かるけど…。」
口ごもり、目のやり場に困る。
いくら17歳とはいえ女の子。
「とりあえず、早く服を着ろ!!」
フイッとソッポを向きながら。
目の前の綾瀬唯を見ないようにした。
「言われなくても着るし。」
普通な反応に、どうしていいか分からない。
眉は深くゆがんでいく。
「綾瀬も女の子なんだから、つつしみを持ちなさい。」
その言葉が精一杯。
「はぁ?何で海翔相手につつしむわけ?」
不思議そうな顔をしながら。
そむけたオレの顔をジッと見た。
「だから、綾瀬は女の子でしょ?」
「わかった!!なんだかんだ言っても、海翔も男だしね。あたしの裸見たら変な想像しちゃうんだ。」
ニンマリと口元をゆるませて。
イタズラな顔を浮かべた。
「違うから!!」
慌てて訂正しているのに。
「そりゃ~オジサンからしたら、17歳の裸なんて見る事ないしね。」
「だから、違うってば!!!」
話なんか聞かない。
会話はドンドン進んでいく。
「オジサンに一言だけ言わせて?」
うわ目使いで、オレの顔をジッと覗き込みながら、ベッドに近づいてきた。
いや…この状況はマズイ。
ドキン
ドキン
抑えたくても大きくなる鼓動。
「なっ…なんだよ。」
警戒しながら少し体を引いた。



