「お帰り…ごめん待っていたら寝ちゃった。花火は?」

ムクッと起き上がり目を擦りながら言うと、はれぼったくなった目を開けた。

「ゴメン!!急な残業で。」

呼吸にふくまれたアルコールの匂いで分かってしまいそうなのに。

慌てて言いわけを始めた。

ウソではないけど。

まさか、本当に待っているなんて思ってもいなかった。

いつものように、ブーブーと文句を言われるって覚悟は決まっていたのに。

「…そっか。」

ただそれだけ言うと、毛布を持ってベッドに潜り込んだ。

寝ボケているだけなのか?

ほんの少し、心に安ど感が芽生えるけど。

薄暗い部屋の中。

綾瀬唯の寂しそうな後姿に、凄い罪悪感に覆われる。

綾瀬唯は、どんなに心待ちにしていたんだろう。

きっと待ちきれなくて、何時間も玄関と部屋をウロウロしたのか?

テーブルの上は、キレイなままで。

ご飯も食べた形跡もない。

どんなに空腹で待っていただろう?

帰りが遅いオレに、約束を破られた?とか…

忘れられた?とか…。

悔しくて泣いたに違いない。

そんな思いがこみあげてきて、自分が情けなくなった。

「あさってこそな。」

綾瀬唯の寝顔にそうツブヤキながら、オレも眠りについた。