「明日ね…。」

重たく閉ざした口が、ポツリとつぶやいた。

海翔には、その意味が分かるはずなんかない。

だから。

「ちゃんと帰るんだぞ。」

さっきの腹を立てていたのがウソみたいに。

ほんの少し口元をゆるめながら、優しく言葉をかける。

本当は、このまま帰るつもりだった。

こんな得体の知れない人と一緒に居たくないし。

まだ、信用とかしたわけじゃないから。

だけど…。

ほんの少しゆるんだ口元。

不思議な温かい感覚が胸の中に小さくポッと現れて。

それが、どこか安心させた。

「てか、あたしにこのまま寝ろと?この、濡れた洋服で。」

急に表情を変え、怒り口調で言った。

「ああ、はいはい。わかりました。」

呆れながら、クローゼットから洋服を取り出して渡し、バスルームへ連れて行った。

海翔は部屋に戻りソファーに横になると、大きなため息をついた。

色々と考えているうちに、一気に疲れが出たかのように眠ってしまった。