「半分は愛情で出来ているんだよ。」
相変わらず臭い台詞を、恥かしげもなく言えるものだ。
「半分だけ?」
イジワルしようと、冷たく言った。
「もう半分は、ケーキの材料だよ。」
泣きそうな顔で答える。
この反応がおもしろくて仕方ない。
だからつい、いじめちゃうんだけど。
「ふ~ん…なんか、毒とか入ってそう。」
冷めた目線でケーキを見た。
「惚れ薬くらいかな。」
爽やかな笑顔を浮かべながら。
あたしの顔をのぞき込んだ。
「絶対!!!食べないし。」
プイッとそっぽを向いて、腕を組みながらソファにもたれた。
「そっか、オレの事好きだから、惚れ薬もいらないか…。」
バクバクと、1人でケーキを食べ始めた。
「ちょっと、誰が尚吾を好きだって言った?」
慌てるあたし。
「……う~ん。姉ちゃん家で。」
口の周りに、クリームをいっぱいつけている。
その顔がかわいくて。
「………姉ちゃん家って。」
見とれて上の空。
「姉ちゃんが好きって言ったら、唯があたしだって好きだもんて、言ったじゃん?」
…………?????
「あぁ~!!!!!!!!!」
ハッと我に返った。
そういえば、そんな事を勢いづいて言ってしまった記憶が…。
「もしかして、忘れていた?」
「それは、その場の空気って言うか…流れって言うか…。」
焦りながら一生懸命、弁明する。
「どんな状況でも、好きじゃなかったら言えないだろ?」
「それは……ほら、クリームだらけじゃん。」
恥かしくて思い出したくないから、忘れようとしていたのに!!
話を誤魔化して、尚吾の鼻の頭にまで付いているクリームを指で取って舐めた。
んんん?
凄く美味しい…。
ひと舐めしただけなのに、甘くてフワフワしている。
「そうやって…。」
尚吾が言いかけた。
「このクリーム、凄く美味しいよ!!!」
目を輝かせながら、尚吾持っているフォークを手に取ると、ひとくちケーキを食べた。
スポンジもフワフワ。
イチゴと生クリームが絶妙に合っている。
まるで、有名パティシエが作ったみたい。



