「本当よ。」
リビングの中からお姉さんが言った。
「どうしてですか?」
「どうしてって…あなたがいれば、尚吾君はそばにいてくれるし。なのに、他の子とくっついたら、あなたの価値なんてないじゃない。」
サラッと言い放った。
「用済みって……事ですか?」
重たい口をゆっくりと動かして。
今にも溢れだしそうな涙を目にためながら。
ジッとお姉さんの顔を見た。
「そうよ。」
冷たく言ったその一言を。
どうしても信じられなくて。
「じゃあ、今までのは?」
聞き返してしまった。
「話したことはホント。だけど、あなたの向こうに尚吾君を見ていたから優しくしただけ。」
確かに、今考えればおかしいところはあった。
急に尚吾が変だったり。
鍵がかかっているはずの玄関を、鍵をなしで入れたり。
尚吾に、鍵を渡していたってことなんだ。
秀が言っていた尚吾のおかしな行動は、これを隠すためのものだったんだ。
だから、他の子とくっつくなんて話したら、お姉さんはあんなに怒ったんだ。
「じゃあ、尚吾とは何もなかったって言うのは?」
「あるわけねぇだろ?だいたい、コイツは姉貴なんかじゃねぇし。」
フッと鼻で笑うと、冷たい目でチラッとお姉さんを見た。
「えっ!?だって、秀のお姉さんじゃないの?」
それも、嘘なの?
何もかもがウソだったってこと?
本当は、尚吾の元カノってだけ?
次々に浮かび上がる疑問で、目の前がグルグルとめまいのような感覚が襲ってくる。