「それもそうよね…お兄ちゃんとデキちゃってるんだもんね。あの顔で、そんな異常なのが好きだったら、知り合いの風俗にでも売っちゃおうと思ったんだけど…あの子なら、いい値段で売れそうだし。」

あたしは異常!?

あの時、全部を話した時に言ってくれた言葉は…?

今までの言葉は…??

……全部嘘だったの??……

自然と体が小さく震える。

ゴクリと息を飲むことさえ忘れさせて。

ただ、ドアに耳を当てて会話を受け止めるのが精一杯。

「ふざけんじゃねぇ!!!!!!」

今まで聞いたことのない、尚吾の怒鳴り声。

ドア越しでも、耳を貫くよう。

「私だって、最初はそんな事思っていなかったわよ!!やっぱり尚吾君が好きなの!!どんな理由でもいいから、そばにいて欲しいのよ!!」

「例え、この先どんな難題突きつけられようと、オレは、オレの心だけは唯に渡したままだ!!!」

尚吾の本当の気持ちが、痛いくらい伝わってきた。

嬉しさで涙が溢れて止まらない。

だけど、声を出したら聞いていたのがバレてしまう。

一生懸命、震える両手で口を押えながら声を押し殺した。

♪♪~

…ヤバイ!!

秀からの電話だ。

慌てて携帯をポケットから出すと同時に、ガチャッとドアが開いた。

「…あ…あの…。」

ドアを開けた尚吾と目が合い、言葉が出てこない。

「……いつから…居たんだよ。」

尚吾の顔が青ざめていく。

「…あ…あの…あ…。」

頭の中は真っ白で、言葉が出てこない。

「聞いていたのか?」

ゆっくり開く尚吾の口に。

コクンと小さくうなずいた。

そして、真っ直ぐに尚吾の目を見上げた。

「ねえ、嘘なんだよね?」

鳴り続ける携帯を強く握り締めながら。

何かの冗談だって言って欲しかった。

スッと視線をそむけた尚吾。