「そうなんだ…あたしは、あんまり尚吾の事とか知らないから。」
そんなに凄かったんだ…。
あたしが知り会った時から、いつもそばにいたし。
それが、当たり前だったのに。
…………………当たり前…………………
当たり前すぎて、気付かなかった。
尚吾がいなくなるってことが。
隣りにいるのが普通の事だと思っていた。
「唯ちゃんくらい仲がいいのが羨ましい…。」
にっこりと笑うその顔に、『ズキンッ』と良心が痛む。
「仲いいわけじゃないよ。いつも尚吾が絡んでくるだけ。」
ミュウの顔が、まともに見られない。
「絡まれるなんていいなぁ~。尚吾さんは、唯ちゃんが好きなんですね。」
そんな寂しそうな顔で笑わないで。
「なに言っているかな?…好きだったのは前のこと。今じゃ、どこの女の子と遊んでいるんだか。最近は、あたしとなんて、口もきいてくれないんだから。」
自分の気持ちとは裏腹に、笑いながら答えた。
「そっか!!」
急に元気な顔になって。
「そうだよ。ミュウにだって可能性あるし。尚吾、ミュウのこと気にしていたから。」
「本当ですか?」
「うん!!それに、尚吾は心の痛みの分かる人間だから大丈夫。」
お姉さんがあたしに言ってくれた事を、そのままミュウに言っている。
「じゃあ、ミュウは頑張って、尚吾さんのセフレになります!!」
鼻息荒く、両手でガッツポーズを決めた。
「違うでしょ?セフレじゃなくて、彼女狙わなきゃ。」
やっぱり、少し感覚ズレてるミュウに笑って突っ込んだ。
あたし、上手く笑えているかな?
引きつりそうな顔を、一生懸命笑ってみせた。



