ミュウは目の前で泣きそうな顔をしながら
「う~ん。分んない。」
って、ミュウが答えているのに。
「分んないって。メールとかして聞いてみた?」
なんて、優しいフリしている自分。
「知らないです。」
「聞いてないの?」
驚いた顔をしながら、ポンポンっと弾むように気持ちが軽くなって行く。
「はい。いつも、ここに来るからって、教えてくれなかったんです。」
今にも泣き出しそうな顔をして、うつむいてしまった。
あれ程、会いづらかったはずなのに。
「ちょっと待って。」
どこか喜んでスカートのポケットから携帯を出すと、尚吾に電話した。
『………電波の届かない所におられるか、電源が入っていないためかかりません…。』
電話から聞こえるアナウンス。
秀が言っていた、連絡が取れないってこれだったんだ。
確かにおかしい。
尚吾の携帯が繋がらないなんて…。
絶対にあり得ないのに。
いつも、連絡がくるばっかりだったから、全然気付かなかった。
電話を切ると、深いため息をついた。
「…ごめん。どこかで女と遊んでいるんじゃないかな?」
自分でも、ひどいこと言っているのは分っている。
だけど、ミュウに対して尚吾の件に関してはトゲが出てしまう。
こんなにも、あたしってばヒドイ人だったって、今になって分かった気がする。
優しいフリしてヒドイことを言いながら、どこかで優越感にひたっている自分が分かっている。
それを、どうにも止められない。
ミュウを口実に、尚吾と何もなかったように会おうとしている。
だけど、顔はいつものように平静を保っている。
こんなにも自分はおかしくなってしまうんだって。
……恋って恐ろしいものだと思った。
だけど。
「尚吾さんくらい人気だったら、話せるだけで凄い事なんですけどね…。」
ため息交じりのミュウの言葉に。



