それでも、尚吾は変わらず不機嫌そうにうつむいたまま。
「……今日のこと、怒っているの?」
震えるような声で聞いた。
「……………。」
あたしを振り払うかのように、無言のまま家を出て行った。
その後姿を泣きながら立ちつくして見ているしかできなかった。
部屋に戻ると、ベッドの上でうずくまって泣いていた。
霧生くんのことも…。
尚吾のことも…。
何もかもが、自分の身勝手でしかない気がして。
♪♪~
急に枕元の携帯が鳴りだした。
「もしもし…秀?」
さっきまで泣いていたから、声がガラガラ。
「大丈夫か?」
心配そうな声。
「うん…なんか、いろいろあって、泣きすぎちゃったみたい。」
少し笑って話してみせた。
秀に、これ以上心配かけたくなくて…。
「そっか…今から会えないか?」
「……なんか、夜に秀と2人きりは、襲われそうでイヤだ。」
思わず口をついて出てしまった。
「あはははは…それだけ嫌味が言えれば大丈夫だな。」
今日、初めて秀の笑い声を聞いた。
「ごめんね。なんか人間の防衛本能が働いちゃって。」
なんて嫌味ったらしく冗談半分、本音半分。
「大丈夫だよ。唯にそんな事しないから。してほしいなら別だけど?」
「してほしくないです!!」
ハッキリ答えた。
「だったら、何もしないから安心して。」
「う~ん…そこら辺、あんまり信用ないけど。」
「ヒドくないか?」
「いや、日頃見ていますから。」
「……あ~……だよな。」
言葉に詰まっている。
眉をゆがませながら、戸惑っている顔が思い浮かぶ。



