尚吾に、何回支えてもらっただろう?
どれだけ愛してくれただろう?
答えられず逃げていたのに、いつも真っすぐに向き合ってくれて…。
軽蔑するわけでも、嫌うわけでもなく。
ずっと、あたしだけを見てくれていた。
自分で願っていたことなのに、心がついていかなくて。
お姉さんの部屋のドアを見つめながら泣くしか出来ない。
あたしは、ホントにバカだ…。
……2~3分だった。
尚吾は、不機嫌そうな顔をしながら出てきた。
チラッと、あたしを見ると、何も見なかったかのようにリビングを出ていった。
「待って!!」
勝手に口走り、出ていこうとする尚吾の背中にとっさに抱きついた。
「…………………。」
何を言うわけでも、振り向いて抱きしめてくれる事もなく、ただ立ち止まっていた。
「…いかないで。」
たった一言の精一杯の勇気だった。
ワガママなのは分かっている。
霧生くんを忘れていないのに。
自分で誰かとくっついて欲しいなんて思っていたのに。
いざとなったら、手放すのが惜しくなって。
必死になって尚吾にしがみついている。
自分でも呆れるくらい都合のいい女だ。
トクン…
トクン…
尚吾の鼓動が、背中越しに聞こえてきて。
初めてだった。
こんなに温かい尚吾の体温が伝わってくるのは。



