「触らないで!!!!!」

尚吾に振り向くこともなく、大きな声を張り上げた。

「………なんでだよ。唯、泣いてんじゃねえかよ。」

一瞬、あたしに伸ばした手をためらった尚吾。

「ほっといてよ!!!!」

廊下に響き渡るくらい声を荒げた。

本当は、誰よりも尚吾に抱きしめて欲しかった。

だけど、今ここであたしは強がるしかできない。

ここで甘えてしまったら、本気で尚吾が好きで止まらなくなる。

強がって意地を張る以外、あたしの気持ちに歯止めをかけることが出来ない。

いつもの秀なら、すぐに尚吾に変わるのに。

気持ちを察してくれたかのように、あたしを抱きしめて離さなかった。

「なんなんだよ!!秀も唯も…急に2人で消えたかと思えば、これだよ…。」

「これだよ…じゃねえよ。最近、尚吾おかしいぞ!?」

珍しく秀が尚吾に噛みついた。

「はぁ~?オレのどこがおかしいんだよ?」

「明らかに、唯を避けているだろ?」

「避けてなんかいねえよ!!!」

「避けているだろうが?今日だって口もきかないし。それに、ミュウって子とベッタリじゃねえかよ。」

「そんなんじゃねえって!!ただ、1人にしとけないだろ?まだ中学生なんだし。」

「それは分るけど、中学生1人を気にするヤツじゃなかっただろ?」

段々と2人が感情をあらわに激しくなる。

「ただの中学生じゃないだろ?」

「そうだけど、ここにはそんなコばっかりだろうが!!」

「唯が仲良くしているんだから、オレだって気にもするよ!!」

二人の怒鳴りあう声に、どうしていいのかも分らない。

霧生くんが亡くなったショックで、頭の中がパニックを起こしている。

もしかしたら、お兄ちゃんが何かをやったのかもしれないし…。

そう思ったら、余計にどうしていいのか分からなくなる。

耳に聞こえるのは、秀と尚吾の激しい言い合い。

あたしは…ただ泣くだけだった。

「それだけじゃない。最近、携帯も繋がらないし、どこで何やってんだよ!?」

「…………。」

急に尚吾が黙った。