「…そろそろ、唯ちゃんも幸せになっていいと思うけどな?」
真っ直ぐに、あたしの顔を見た。
こんなにも、言葉が重く心にズッシリと響いたことはなかった。
「でも……。」
もし、尚吾を失ったら?
怖くて仕方がない。
唇を少しだけ噛みしめながら。
顔をうつむけた。
「……もしかしたら、そのミュウって女の子。セックス依存症かもね?」
ポツリとつぶやいたお姉さんの言葉を聞き逃さなかった。
パッと顔を上げて。
「え!?セックス依存症って……何ですか?」
お姉さんに聞いていた。
「アルコール依存症とか買い物依存症と同じって言えば分かるかな?性的対象に依存している間は、脳内から快感物質が放出されるらしくて、不安から一時的に逃れられるメカニズムから起こるらしいの。幼児期や成人への成長過程で肉親からの愛情が得られなかったことに起因する場合が多いみたい。」
「あ……合っているかも。」
親は異性にだらしがなくて、ミュウより異性って感じだったみたいだし。
…あたしも似たようなものだけど。
あの時は、お兄ちゃんがいてくれたから。
まだ本当のお兄ちゃんを知らなかったから。
ズキンっと胸が痛んだ。
もし…あたしにお兄ちゃんがいなかったら?
きっと、ミュウと同じになっていたかもしれない。
そう思ったら。
もう一人の自分に思えて。
自然と心が痛くなってくる。
「このまま放っておいたら、尚吾くん情に流されて……一夜でも共にしてそのまま取られちゃうかもね。」
なんて、遠い目をしながら口元をゆるませた。
「べ……別に……」
言いかけた時。
ピンポ~ン!!!
ピンポ~ン!!!!
ピンポ~ン!!!
ピンポ~ン!!!
このチャイムの鳴らし方は…。
ガチャっ。
玄関が開く音がすると、誰かが廊下を歩いてくる。
もしかして…
カチャン。
廊下のドアが開くと、少しイラ立った尚吾が入ってきた。
「何で、尚吾が来るかな?」
プイッと、そっぽを向いた。



