「なにがですか?」
「心配で、尚吾君に電話しちゃったの。」
「別に謝ることじゃ…あたし関係ないし…。」
「ありがとう。喧嘩したのかと思ったら、違うのね。」
「なんか、自分でもよく分らなくて。」
ここまでの事や、自分の気持の事。
上手く説明できないけど、思ったようにお姉さんに話した。
お姉さんは、真剣に話しを聞くと、あたしの話が終わると同時に『クスッ』と鼻で笑った。
「なっ、何がおかしいんですか?」
少しムキになると、お姉さんは小さく横に首を振った。
「ごめんなさい。そうじゃないの…。」
「じゃあ、なんですか?」
「唯ちゃん、尚吾君が好きなのね。」
「はぁ~?」
どこをどうしたらそうなるの?
眉が自然とゆがんでしまう。
「それって、嫉妬っていうのよ。」
「嫉妬?」
「尚吾君が好きだから、他の人と仲良くしているだけでヤキモチ妬いちゃうの。」
「そ…そんなんじゃ…。」
「あら、自分に正直にならないと、なにも解決しないわよ。」
ほろ酔いのお姉さんが、身を乗り出してあたしの顔を指差した。
「お姉さん、酔っているでしょ?」
笑い飛ばしながら、話をすり替えた。
そうしなかったら、もっと尚吾の事を突っ込まれて聞かれてしまいそうで。
言葉に詰まって、よけいに混乱しそうだったから。
「素直じゃないんだから。恋っていいものよ?」
いじけたように口をとがらせると、ゴクッとビールを飲み干した。
今日はなぜだかドキドキしちゃって、お姉さんの言葉に戸惑ってしまう。
ビールのせいなのか?
「だけど、あたしは…。」
お兄ちゃんの事とかあって、恋なんてできないでいるのに。



