借金はチャラになったけど、私は風俗嬢からじいさんの愛人になっただけ。
それが、悲劇を招くとは思いもしなかった。
愛人生活中にも、尚吾君とは隠れてこそこそと付き合ってはいた。
だって、やっぱり普通の恋愛をしたかったし。
尚吾君といると安心できた。
だけどその終わりはあっけなかったわ。
「どういう事なんだよ!!!!!」
その日、会えないって言ったはずなのに、尚吾君は血相を変えてやってきた。
私の目の前に、力いっぱい興信所の書類を叩きつけた。
そこには、じいさんの親類が調べた私とじいさんの関係が書かれた書類と、証拠写真が入っていた。
「だからなんなの?私は3億で買われたのよ?」
言葉に思い切り感情をあらわにした。
急に尚吾君の顔がうつむいて。
「知っていたのかよ……。」
唇を噛み締めてつぶやいた。
「なにが?」
「オレの、爺ちゃんだって知っていたのかよ!?」
「…嘘でしょ?」
びっくりして、言葉なんか出なかった。
「嘘なんかじゃねえよ。家に帰ったら、こんなのが置いてあって。」
書類を強く指差した。
「知らないわよ。大体、客で知り合ったのよ?」
本当に何も知らなかった。
単なる女好きのじいさんの余生の遊びくらいにしか思っていなかったから。
名前も聞くことも聞からることもなくて。
私は源氏なで呼ばれていた。
じいさんは、荘介(そうすけ)って、本当かウソかも分からない名前を呼んでいたから。



