「うるせえから。」

ムッと口をとがらせた。

「うるさいって…。」

眉が深くゆがむ。

「オレからの頼みだ。」

「は!?何を言い出しているの?」

うるさいとか言って、キスすることが頼み?

ふざけるのもいいかげんにして欲しい。

もう、怒りが頂点に達しようとした時。

「守らせてくれ。お前を全てから……守らせてほしい。オレは守りたいんじゃない。守らせてほしいんだ。」

突然浮かべた真剣な表情に戸惑った。

「ど……どういう意味?」

あれだけイラだった気持ちが。

一気に引いてしまった。

「オレが守ることを許可してほしい。オレが一緒にいたいんだよ……一緒に逃げて欲しい。」

深く頭を下げるその姿に。

ほんの少しだけ。

信じてみてもいいかな?

って、思ってしまった。

だから

「……本当に…いいの?」

尚吾の顔をのぞき込みながら。

ゆっくりと口を開いた。

「唯がダメと言わなければ…行こう?みんなが待っている。」

スッと立ち上がると、目の前に大きな手を差し出した。

何も答えなかった。

……答えられなかった。

この状況で、そこまで言ってくれる尚吾の気持ちが嬉しくて。

この手に賭けてみようって少しだけ思った。

だから、尚吾の手にあたしの手を乗せると、ギュッとつかんだ。