「いろいろって?」
「家出中どこにいたとか、あの尚吾とかいう男の所か?」
「違うよ。尚吾とは何もないよ。ただ、住むところとか面倒みてくれただけ。」
「彼氏なのに?」
「あれは嘘だよ。」
必死に笑ってゴマかそうと思うのに。
カラダが小さく震えて。
声も震えている。
「嘘にしちゃ、仲が良さそうだったけど?」
「ほら、美緒ちゃんとかに変な誤解させたくなかったし。」
本当の話なのに、たどたどしくなっちゃう。
「じゃあ、もう家から出る必要ないな。」
カプッと耳を噛んだ。
「ひゃっ…。」
ガクリと腰が抜けて、その場になだれ落ちた。
その瞬間。
力いっぱい、髪をつかみ上げられ。
ズキリと頭に痛みが走った。
痛みに顔がゆがむのに
「どうしてそんな顔をしている?大好きなお兄ちゃんに会えたのに。」
凄惨(せいさん)な笑みを浮かべながら、グッと顔を近づけた。
「ち……ちが……。」
プルプルと小さく首を横に振った。
痛みと恐怖で言葉なんか出ない。
代わりに出てくるのは、大粒の涙だけ。
「だったら言えるよな?」
口元をゆっくりとゆるめた。
言わせたい言葉は分かっている。
でも…それだけは言いたくない。
言ってしまったら、もう自分に戻れなくなりそう。
何も答えられない。
グイッといきなり腕をつかみ上げると、バンッ!!と床の上に投げ飛ばした。
痛みがカラダ中に走り抜ける。
グッとあごをつかみ上げ
「お兄ちゃんに、ウソをついているね?両親が嫌で出て行ったのは仕方ない。お兄ちゃんとも連絡がつかなくて、途方にくれていた。そこにつけ入れられたんだろう?」
違うって言いたいのに。
あごをつかむ手に力が入って。
痛くて言葉にならない。
「何回、そのカラダに触れさせた!?何回、カラダを開いたんだ!?」
初めて聞いた。
お兄ちゃんの大きな声。
それと同時に飛んできたバシンッ!!って、大きな音を立てて。
左のほっぺに激痛が突き抜けた。
ジンジンと痛みを響かせて。
口の中はじんわりと血の味がにじんでくる。



