「なあ、唯。行く所があるってどこだよ?」

「別に…顔見たし、お邪魔しちゃ悪いから。」

適当に答えておく。

お兄ちゃんの話しなんてしたくもない。

それに、あたしがお兄ちゃんから逃げてる話をするってことは。

あたしとお兄ちゃんの関係も知られるってこと。

そんな汚いこと、絶対に言えるはずない。

「なんだ。それだけか。」

尚吾が納得したかのように笑った。

結局3人でマックでごはん食べて帰った。

それから2週間。

別に変わりはなかった。

あたしの頭の片隅には、不安はあったけど相変わらずの毎日だったし。

だから数日後。

「唯。美緒ちゃんからメールきて、明日みんなでごはん食べようだって。」

ちょっと不満そうに丘芹が言ってきたけど。

「邪魔しちゃ悪いから、行きたくないし。」

気分はのらない。

会ったらお兄ちゃんの話しになるわけだし。

これ以上、お兄ちゃんを思い出したくない。

「えぇ~!!せっかく、美緒ちゃんと会えるのに。」

完全にあたしを口実に使っているのが分かる。

いつもだったら協力してあげたいけど。

今回は別。

「約束だけして、急用できて来られないとか言っておけば?」

「美緒ちゃんが、どうしても唯に会いたいらしいよ。この前も唯達が帰ってからも唯の話で盛り上がったし。」

その一言に、ゾクっと背筋に冷たい電流が走った。

「あたしの話ってなに?」

眉をゆがめながら、丘芹の顔を見た。