「かわいい唯ちゃんのメールだったから、返事ができなくて申し訳ないから飛んできたよ。」
秀も冗談で笑わせてくれる。
「急いできたんだったら、階段くらい走って息切らせてこいよ。」
いつもだったら、尚吾がヤジを入れるはずなのに、今日は尚吾も一緒に冗談言って笑っている。
「やっべぇ~、そうすれば完璧だったか。」
「そうやって、いつも女の子をダマしているんだ。」
「人聞き悪いな。ダマしていませんよ。オレは、一人ひとりにちゃんとつくしていますから。」
「そうなんだよ。秀はマメだからな。1人ずつ、ちゃんと誕生日とか記念日とか、マメにプレゼントとかしているし。女達も納得しているからな。」
「意外!!!!」
「でしょ!?やる前には、ちゃんと遊びだよって言うから。それが嫌だったら遊ばないし。」
「ふ~ん。じゃあ、彼女作らないんだ。」
「1人に絞(しぼ)るのは、もったいない気がしてさ。」
顔は見えないけど、少しだけ声のトーンが下がったのが分った。
秀には秀なりの事情があるんだろうな…。
だから、あえて突っ込まなかった。
1人1人、事情があるのか…。
やっぱり…霧生くんにも何かがあるんだろうな?
きっと、霧生くんならそれが解決したら連絡くれるよね。
あたしは携帯を止められるまで持っていることに決めた。
携帯が繋がっているって事は、何か事情があるって事なんだろうし…。
だから今は、そっとしておいてあげよう。
だけど、どうしても気になって。
あの後しばらくして霧生くんのマンションに行ったけど、やっぱり引っ越していた。
あたしの携帯だけは、相変わらず止まっていない。
だから、いつか連絡をくれると信じて待っているしかなかった。



