突然、耳元で何かが勢い良く刺さる音がした。
あまりの凄い音に、恐怖で目が開かない。
だけど。
バタンッ!!
すぐに玄関でドアの閉まる音がした。
ゴクリと息をのみ、ゆっくりと目を明けて驚愕(きょうがく)するしかなかった。
「………………。」
恐怖で言葉なんかでない。
出てくるのは涙だけ。
声を押し殺し、手で口を押さえ嗚咽(おえつ)さえ押し殺して泣いた。
視界に入る月明かりで何やら光るもの。
耳元から数ミリしか離れていない。
そこには、力強く包丁がベッドに刺さっていた。
なんで?
どうして?
あたしには、何が起こったかなんて分からない。
ただ、霧生くんがやった事と、霧生くんの姿が無くなっていたことだけが分かる。
なんでこんな事をしたの?
あたしの事、好きだったんじゃないの?
あのキスは、そういう意味じゃなかったの?
こんな事をするなら、何であたしに好きって言わせたの?
不安と悲しさと理解できない状況に、涙が溢れて止まらない。
体なんか動かない。
しばらく仰向けのまま、両手で口元を抑えながら。
声を押し殺して泣き続けた。
時間なんて分らない。
ただ、うっすらと日が昇ってきたのは、窓に差し込む光で分った。
朝が来たんだ…。



