秀が扉を開けると、そこには異空間とも言うべきモノが目に飛び込んだ。
そのドアを閉めると、フロアの爆音は一切聞こえない。
真っ直ぐな廊下で、廊下を挟んで両脇に扉が10個並んでいた。
廊下の奥には、小さな噴水がブルーの照明でキレイにライトアップされている。
さっきまでの爆音とは違って、心地よい水の音が聞こえる。
観葉植物が至る所に置いてあるし、高級感で溢れている。
薄暗い廊下の手前から3つ目のドアの中に入った。
そこは、どこかのスウィートルームのような部屋。
ここは一体…?
みんなは慣れたように、部屋の真ん中にある大きなソファに座る。
「この部屋は?」
キョロキョロと部屋の中を見回しながらソファに座った。
「ここね、秘密の部屋なんだ。」
ニッコリ笑いながら秀が言った。
「秘密の?」
「そう。特別な人しか入れない。」
「どうして?」
って、聞いたのに。
秀は笑ったまま答えなかった。
「元々はオレの爺ちゃんが、このビルをホテルにしようとしたんだ。だけど、入るはずのホテルが倒産してね。それでビルを遊ばしておくのももったいないって、クラブと地下のここだけ残したってワケ。」
尚吾が言いながら、冷蔵庫からビールを出してみんなに投げ渡した。
「まぁ、クラブを見れば、ここが何に使われるかは想像におまかせ。」
秀の視線はチラッと部屋の中の大きなベッドに向けた。
「でも、俺ここに入ったの初めてっすよ?」
皆の顔を見回しながら男が目をぱちくりとさせる。
「当たり前だろう。普通のヤツは入れないから。秀とオレがよくホテル代わりに使うのがメインなんだよ。」
自慢げにフッと鼻で笑った。
「最低ぇ~!!!」
軽蔑した目で、尚吾だけを見た。
別に自慢そうにしたのが気に入らなかったわけじゃない。
よくホテル代わりに使うって。
見境なくそういうことをする人ってことでしょ?
最低としか言えない。
「最近は、オレは使わないし…。」
急に潤んだ上目づかいであたしを見ている。
そんな目をされたって、良心はチクリとも痛まないし。
母性本能すら減退。
あたしは絶対にダマされないんだから。



