「その…どこまで犯人分ったの?」
「犯人どころか、手がかりすら掴めなかった。唯一つかめた情報は、お姉さん達の勤務していた病院は、ちょっと変わっているって事だけ。」
「…ちょっと…変わっている?」
うつろな目でお兄さんを見た。
「あぁ…院長の娘に関わると、大変な目に会うって事。」
「…ご…ごめんな…さい…。」
虚ろな目から、いつの間にか涙が溢れていた。
「どうしたんだよ?キミが泣く事ないだろ?」
お兄さんは、慌てながらティッシュを差し出した。
「あたし…あた…あたし…」
これ以上の言葉が出てこない。
喉の奥でつかえて出てこない。
怖いのと苦しいのと。
この先の言葉を言わなきゃいけないのに。
怖くて苦しくて。
喉の奥で言葉が焼け付いたように、喉が痛くて言葉にならない。
「こんな怖い話をしてごめん。そうだよな知らない男の部屋で、こんな話されたら怖いもんな。」
一生懸命、頭を優しくなでながら、なぐさめてくれるお兄さん。
「ち…ちが…違い…」
その優しさが、心に突き刺さるように痛くて。
お兄さんの悲しみの原因は、ここなんだって。
嫌ってほど現実を突きつけられる。
優しさなんて、もらう資格なんかない。
優しくなでてくれる手を振り払うかのように。
小さく首を横に振る。
「いいんだよ。」
寂しそうに笑うお兄さんの顔が、涙でにじんでいても良く分る。
この先、お兄さんから何を言われるか分からなけど。
その苦しさや痛みが分かるから。
「あた…あたし…蒔宮…蒔宮紗羽。」
喉の奥でつかえていた言葉が。
悲しみと恐怖で震える唇から。
ゆっくりと出て来た。



