「今は、どこに引っ越したやらね。下の娘さんも、結婚決まっていたのに噂のおかげで破談になったしね。」
「そうなんですか…あの、お向かいの霧生さんなんですが。」
霧生くんの実家は、引っ越した気配はないから。
このおばちゃんなら、何か知っていると思った。
「ああ、霧生さんがどうかしたの?」
「あの、病院で…」
「 そうよね、学くんも楓ちゃんと同じ病院だったのよね。」
「…それで、霧生くんは?」
ドクン
ドクン
おばちゃんの口の動きより早く。
体中を緊張感が駆け巡る。
「楓ちゃんの事があってから、一度帰ってきたんだけど…」
さっきまでの軽やかな口調が、急に眉をゆがませながら口ごもって視線をそらした。
それなのに、帰って来たって言葉が嬉しくて。
「今は、どこにいるんですか?」
そらされた視線をジッと見つめた。



