「ここの一番上のお嬢さん。」
そのおばちゃんの言葉で。
もしかして冬槻先生『かえで』って名前だったんだって。
だって、苗字しか知らなかったし、霧生くんも冬槻って呼んでいたから。
下の名前までは知らなかった。
初めて知った名前に、やっと謎が解けた。
「そうです。その冬槻先生の病院の…」
「そうだったったの。でも、残念ね。」
「残念?」
「今は誰も住んでないのよ。事件があってからね、イロイロとあって…こんな田舎町だから、噂が回るの早くてね。被害者とはいえ、さすがにあんな噂を立てられたらねぇ。」
「あんな噂?」
「お譲ちゃんみたいなコが、聞く話じゃないよ。」
そう言いながら笑ったけど。
一体、どんな噂話だったんだろう?
家を手放さなきゃいけないくらいなんて。
「今は、どこに住んでいるんですか?」
深く聞くことも出来なくて。
…おばちゃんの雰囲気に聞いちゃいけないような気がして。
そう答えるしかなかった。



