「…その、アルバムの事。」

ゆっくりと開いた口。

その口調と同じくらい切なそうなお兄さんの瞳の中。

「もう、いいんです。あの人の実家に今から行って、どこにいるか聞いてくればいいから。」

ニッコリと笑いかけた。

「どうしても、聞いて欲しいんだ…思い出しちゃってさ。」

そう言いながら、どこか悲しみを含んだほほ笑みを浮かべた。

「思い出しちゃったって?」

「このアルバムをどうして持っているか…何故か知らないけど、偶然見つけた君に話したいんだ。」

どうしてあたしに?

見ず知らずのあたしなの?

お兄さんの悲しみを含んだ微笑みが、まるで自分の心の中の顔と同じような気がして。

ギュッと胸を締め付ける。

「分った…だけど。」

お兄さんの真剣さに『NO』とは言えなかった。

ただ…霧生くんの実家に行きたいって気持ちが強くて。

視線をそらしながら、口ごもってしまった。

お兄さんは、何かを察したみたいで、

「そっか、探してる人がいるんだったよね?」

「うん。だから、そこから、帰ってきたらでいいかな?」

「ああ。今日はバイト休んで待ってるから。」

「分かった。」

約束すると、足早に駅に向かった。