「あぁ、濡れちゃった?気にしなくていいよ。」

優しい笑みを浮かべながら、差し出した卒業アルバムを手に取って、パラパラと中身を開いた。

「違うんです。このアルバムの事が聞きたいんです!!」

うつむいた顔を上げて。

ジッとお兄さんの目を見た。

緊張感が一気に加速して。

悲しくもないのに、瞳がうるんでしまう。

ギュッと手を握りしめて。

お兄さんからのどんな言葉でも受け入れる覚悟を決めた。

「このアルバム?実は…。」

ああ…って顔をしながら、言いかけた時。

「ごっ…ごほんっ。」

後ろに並んだサラリーマンのおじさん達が、邪魔と言わんばかりに咳払いした。

「ちょっと待ってて。」

お兄さんはそう言うと、持っていたアルバムをあたしに渡してレジを打ち始めた。

ドキン…
ドキン…

レジ横でアルバムを大事そうに抱えながら、まだかまだかと待っていた。

「ありがとうございました。」

最後のサラリーマンに大きく挨拶すると、ニッコリ笑ってあたしを見た。

「あの、このアルバムって…」

待っていましたとばかりに、向けられたお兄さんの笑顔に問いかけた。