尚吾だ。
もう、シツコイってばない。
「ねぇ、ねぇ、好きなモノなに?」
「…。」
「学校行かないの?」
「…。」
「よかったらさ、『G』ってクラブにおいでよ。夜はいつもそこに居るからさ。オレの名前出せばタダで入れるし。特別室もあるしさ。」
「…。」
いいこと言って何するつもり?
まったく耳を傾(かたむ)けるつもりなんてない。
何を言われても耳を素通り。
表情ひとつ変えず、まるで、空気のように知らん顔。
それでも諦めることもなく。
「今夜、泊りに来ちゃいなよ。遅くなったら危ないから、泊りに来ちゃえばいいじゃん。」
携帯をピコピコといじりながら、ずっと話しかけている。
今日は、あたしで何人目に同じ台詞を言っているわけ。
その携帯の相手にも、同じことをメールしてるんでしょ?
この軽さに呆れたくなる。
だから、会いたくないから時間とか全く変えているのに。
どこかから湧いてくるように。
「今日は何してるの?」
って、見つかって声をかけられる。
発信機でもついている?
なんて思っちゃうくらい。
だから聞こえないふりをして相手にしてないのに。
この間なんて、友達の何君だった?
連れてきて。
目のクリッとした男の子。
名前まで覚えてないけど…
なに?
今度はイケメンで気を引こう作戦!?
ちょっと、心の中で笑ってしまった。
だって、あまりにも必死なんだもん。



