それに、ファミレスにいたら。
もしかしたら…
霧生くんにバッタリ会えるかもって。
この街に霧生くんがいるなんてことはないのに。
叶わない期待をしちゃって。
会えないって分かっているのに。
つい、ドアが開くたびに。
もしかしたらって、入ってくる人を見てしまう。
そうやって、ボーっとしているだけなのに。
「昨日はどうも…。」
斜め後ろから尚吾が声をかけてきた。
「………。」
ムッとした顔をしながら、思いっ切り睨(にら)んだ。
「オレ尚吾。名前は?いくつ?高校生?お家ドコ?彼氏いるの?…」
ひるむとか諦めるとかじゃなく、一人でベラベラ喋っている。
相変わらずウッザイな!!
…この男。
BGMくらいに思って、視線も向けず気にも留めなかった。
しばらくシカトしていると、どこかに行ってしまった。
諦めたんだ…
くらいに思っていた。
なのに、30分もすると、何やら抱えて戻ってきた。
「出会って2日目の記念日に。ちょうど、今と同じ時間に出会ったんだよ。」
抱えきれない程の薔薇の花束を差し出した。
すっごいナルシスト??
顔は平常…
気持ち引きつっていた。
今時、こんな男いたわけ!?
心の中で大絶叫。
それも受け取ることなく、シカトしてファミレスを出て行った。
しかも、会うのはファミレスだけじゃなかった。
アイスを買おうとお店に入れば居るし。
勝手にお金まで払ってくれちゃって。
こんなの食べたら、何要求されるか分んない!!
店の前のゴミ箱に力いっぱい投げ捨ててやった。
当然、怒って二度と会う事もないと思っていた。
だけど、ストーカーを超越した感じで。
ヒトカラしてれば、どこからともなく乱入してくるし。
映画を見てれば、突然、隣に座っているし…
まさにパパラッチ?
いつでも・どこでも…
さすがにホテルには居なかったけど。
ホテルが、1番の安息の場所。
だって、いまいましい尚吾って男に会わなくてすむし。
それにお兄ちゃんに、見つからなくてすむから。
でも、ずっとホテルに居てもすることもなくて。
結局、来てしまう。
会いたくないヤツはいたけど…



