「霧生くん?…病院辞めたって…」
部屋の中は、いつもと変わらない。
窓辺に置かれた鉢植えも、気持ちよさそうに風を浴びている。
コンビにでも行っているのかな?
少し安心して部屋の中を見回した。
ふと、視線がテーブルの上に向いた。
手紙?
誰にだろう。
手紙を手に取ると、そこには
『チワワへ…』
あたし宛ての手紙。
便箋一枚に数行しか書かれていない。
「なに?これ…。」
中身を読んで思わず部屋を飛び出した。
どこに行けばいいかなんて全然分らない。
だけど今何かをしなければ、きっと後悔する。
ただひたすら走り回った。
手紙の内容が、頭の中の嫌な予感を的中させようとしていた。
霧生くん!!お願いだから…
お願いだから、死ぬなんて考えないで!!
溢れてくる涙が風に千切(ちぎ)れていく。
無我夢中で走っていた。
霧生くんの行きそうな所。
全然、思いつかない自分に腹が立って仕方ない。
霧生くん!!霧生くん!!霧生くん!!
心の中で叫び続けていた。
どうする事もできない自分の無力さを痛感させられる。
どれだけ走ったのかも分からない。



