ゆっくり開いたドアの中には、重たい空気と険しい表情をした霧生くんが立っていた。

生きていた…。

安心したのもつかの間。

あたしの顔を見るなり、崩れ落ちるように抱きついてきた。

「…ごめん…ごめん。」

ただ、謝るだけで。

何が起こっているか分からない。

ただ…

鼻にかかる声。

霧生くん…泣いているの?

小さく震えている体。

声を押し殺して泣いているのが伝わってきた。

「どうしたの?…冬槻先生と何があったの?」

震える体を優しく抱きしめると、抱きついてきた霧生くんの腕が痛いくらいきつくなってくる。

「……だ。」

「なに?冬槻先生がどうしたの?」

「…んだんだ…………冬槻が死んだ。」

「嘘だよ。何かの冗談でしょ?」

突然の出来事に、霧生くんの言葉を素直に受け取れなかった。

だって3日前まで元気だったじゃん。

そんな簡単に死ぬはずないよ。

「オレだって、ウソであって欲しい。」

今にも消えそうな声。

「とりあえず、落ち着こう?話聞くからさ。」

霧生くんを支えるように部屋に入った。