お兄ちゃんの顔を見るのが怖い。
こんなの初めてで。
どうしていいか分かんない。
「…コンビニ、送ってかなくていいのか?」
お兄ちゃんから話しかけてくれた。
「あ…うん。すぐ近く…」
言いかけた時。
フッと目の前の視界が変わって。
お兄ちゃんの顔が目の前にあった。
「ダメだよ!!」
ビックリしたからだと思う。
とっさに両手でお兄ちゃんの肩を押して顔をそむけて、お兄ちゃんのキスを拒んでしまった。
「どうした?いつもの紗羽らしくないけど…」
そうだよね?
不思議なのは自分でも同じ。
「ほら、エレベーターがいつ開くか分かんないじゃん?恥ずかしいの。」
そう適当ないいわけしかできない。
「そうなの?いつもどこでもキスしてってねだるのに?」
「ほら、お父さんいるんでしょ?誰かに見られて、お父さんに何か言われたら…お兄ちゃん怒られちゃうでしょ?」
ポンポンと口からいいわけが出てくるのが驚き。
だって、本当に恥ずかしくて。
いつもの自分じゃないこの感情。
自分の意思じゃないのに、思わずいいわけがいっぱい出てくるんだもん。



