「え?」
不思議そうなお兄ちゃんの顔。
振り返ったあたしの顔も。
ビックリして止まっている。
「さっき、病院の入り口で落し物があって。届けてくれたんですよ。」
適当なウソを霧生くんが話している。
もしかして…
助けてくれた?
「そうなんですか。」
ホッとした顔のお兄ちゃん。
「子供が入院するお母さんが、子供に気を取られて入院手続きの書類をどこかに忘れてきたって大慌てで。それをたまたまロビーで拾って届けてくれたんですよ。」
やっぱり。
あたしを助けてくれたんだ。
でも…
霧生くん。
大丈夫かな?
あたしに関わったら、クビになるんじゃないの?
でも、相手はお兄ちゃんだし。
届け物くらいでクビにはならないか。
「なんだ、それでここにいたのか。」
「う…うん。お兄ちゃんは?」
適当に霧生くんの話に合わせて答えた。
「親父に届け物があって今帰りなんだ。じゃあ、一緒に帰るか?」
スッと差し出された手。
「あ…ごめん。あの…コンビニ行ってから帰るね。」
フッとお兄ちゃんの手から視線をそらすと。
もう一度、エレベーターのボタンを押した。
自分でも分かんない。



