「心の田舎で、心のお兄さん?」
とぼけた顔をしながら霧生くんを指差した。
「はあ?なんだよ、心の田舎とか心のお兄さんとか。」
呆れて大きなため息をついた。
「大家さん、アパートの裏に住んでいるんだね。優しい老夫婦でビックリした。」
「話を変えるな。大体、何をしに来たんだよ?」
「アイス食べに来た。」
スッと目の前に食べかけのアイスのカップを差し出した。
「このアイス…。」
霧生くんの顔が勢いよく冷蔵庫に向いた。
「うん。あたしの好きなハーゲンダッツのストロベリー、よく知ってたね。」
上機嫌にアイスをスプーンですくうと。
パクッと一口食べた。
「たまたまだよ。」
がっくりとうなだれると、大きなため息をついて。
顔を手で押さえた。
「じゃあ、ラッキー。今度から用意しておいてね。」
ポンと霧生くんの肩を叩いた瞬間。
「今度はないです。」
そう言いながら、手の中にあったアイスのカップを取り上げると、玄関の前に立った。
「なにするの!?」
スプーンをくわえながら、慌てて霧生くんを追いかけた。



