「ダ~メ。もう10時になるし、中学生は帰るの。」
「いいじゃん。お兄ちゃんなら、好きなだけ遊ばせてくれるよ!?」
仁王立ちでファミレスのドア前で大きくホッペを膨らませている。
「お兄ちゃんは保護者でしょ?そんなに遊びたいなら、お兄ちゃんと遊びなさい。」
呆れた顔をしながら、小さくため息をついた。
「彼女いないんだし、いいじゃん。お兄ちゃん今日は帰り遅いんだもん!!」
そんなに呆れなくてもいいじゃん?
大体、お兄ちゃんは絢音と今頃、楽しい食事会でもしてるんだろうな。
悲しくなるような妄想が頭の中を回っていく。
さっきまで温かかった空気が、一瞬で冷めてしまったかのように夜風が冷たく感じる。
「じゃあ、宿題しなさい。」
「…宿題ないもん。」
ポツリとつぶやきながら、チラッと霧生くんから目を逸らした。
霧生くんに冷たく言われたからじゃない。
何でだろう?
心のどこかの後ろめたさに、自然と目をそむけてしまう。



