ジンジンと痺れた胸のせいだ。 お兄ちゃんがいなくて寂しくて。 だから、冗談も本気にしちゃったんだ。 なんて。 さっきまで、ドキンって鳴っていた鼓動の理由と、この重たく沈んでゆく感覚の意味を必死に考えている。 「さて…帰るか。」 つぶやきながら一歩、足を踏み出した瞬間。 目の前に見知らぬバイクがピタリと止まった。 周りは暗いしライトは眩しいし。 フルフェイスのヘルメットで顔も見えない。 まさか誘拐!? この状況で、そんなカンが働くのは早かった。