シャクジの森で〜青龍の涙〜

やっとこ振り向いてくれたリードの瞳が大きく見開かれ、耳がどんどん紅く染まっていった。



「・・・ふ?って、フランクさんですか??」

「ぁぁあああ貴女はっ、いつの間にっ」

「え・・あの?さっきからずっといるわ?・・・あ、リードさん、待って!お話を聞いて欲しいの」



お土産を握ったまま鼻のあたりを隠して、何故だかダダダと後退りをしていってしまう。

一歩近づくと一歩下ってしまって、これでは永遠に近付くことが出来ない。

腕を伸ばして、リードさん、と呼びかければ、ちょっぴり怯える感じを見せるリード。

エミリーは、ハッと気付いてしまった。

伸ばしていたか細い腕が、ゆっくりと下ろされていく。



―――やっぱり、リードさんもシャルルが怖いのよね・・・。



「・・・シャルル」



腕の中に大人しく収まっているシャルルの鼻のあたりをそっと撫でると、気持よさそうに目を瞑る。

こんなに大人しくて可愛いのに、どうして・・?と、しゅん、としてしまう。

以前小鳥のお世話をしてくれたからとはいえ、皆と同じで、リードにも無理なのだ。



―――どうしたらいいのかしら・・・。

もう一度、アラン様とお話をしたほうがいいわよね・・・勝手に決めてしまったのは、いけなかったわ。



「ごめんなさい、リードさん。何でもないの。どうぞ、お買いものを楽しんでください」



哀しい気持ちを押さえこみながら微笑んで、売り場から離れようとしていると、隣に人が立った気配がした。

見上げるとリードがいて、バツの悪そうな顔をして、ゴホン・・と咳払いをしている。



「よ、用は、何なんですか」

「ぁ・・リードさん、でも―――」

「べ・・別に、貴女の元気がないから、というわけではありませんからっ。早く用事とやらを済ませてください。貴女の護衛がこわ・・・っ、いえ、買い物があるんですから」



早く話して下さい。

そう言ってリードは、握っている土産物を振って見せた。

そんな彼に、エミリーは腕の中のシャルルがよく見えるように、差し出した。



「あ、あの、お願いというのは、実は、この子のことなの」

「あぁ噂のペット様ですね。ご存知のように、病気ならば私は診れません。同行医官にお願いして下さい。と言っても、フランクさんじゃないので獣は診られないかもしれませんが」

「違うんです。道中、この子と一緒にいて欲しいんです」

「一緒に?イマイチ、言ってる意味が分かりません。もっと分かるように言ってくれませんか」



リードはうんざりとした声を出し、心底分からないといった感じで首をひねる。