シャクジの森で〜青龍の涙〜

「は~い!1年ぶりで御座いますぅ。王子様にはご結婚なされたそうで、大変おめでたいことで御座いますぅ!!これはまた麗しい王子妃様!お初にお目にかかり、光栄至極で御座いますぅ!」



喜びの舞いを一つ!と叫んでくるんくるんとまわり、両腕を広げて精一杯に喜びを表現する館長。

そのそで口や靴にも、あちこちに付けられたキラキラ光る四角い飾りが目に入り、エミリーは楽しくなってきてしまった。

込み上げる笑いを堪えながらアランを見上げると、特に表情は変わっていない。

無言のまま、ただ、まっすぐに館長を見ていた。

視線を戻せば、館長は満足感たっぷりな体で、ピタリとポーズを決めている。



―――えっと、これは拍手したほうがいいのかしら??



アランもウォルターたちも、皆、何もする様子がない。



けれど、でも、館長さんは―――



迷っていると、通りがかりの旅人たちから口笛と拍手が送られてきた。

館長はそちらに向かって両手を振ってこたえて、投げキスまでして、旅人たちの笑いを誘っている。

厳つい顔つきに似合わない口調、おかしな格好にへんてこな舞い。

エミリーが戸惑うような、そんないろいろを、あっさりと無視するように、アランは普通に言葉を交わし始めている。

内容は、いわゆる世間話のような感じだけれど。

動じないアランが、すごい。



「して、ヘルマップ。供の者が、先に着いておる筈だが」

「え~ぇ、は~いはい。既にご案内して御座いますぅ!王子様達は、こちらに、どうぞぉ」



館長は、最初と変わらない態度で、さぁさぁ此方へと先導を始めた。



「皆さまは、大広間ですでにお食事中で御座いますぅ。王子様達には、私からのお祝いもありまして、特別メニューをご用意いたしましたぁ。誰にも邪魔されず、二人きりで、ごゆっくりど~ぞ~」



白とクリーム色のチェッカー模様の可愛らしいドア。

中に入ると、壁の模様も、可愛らしかった。

クリーム色を基調にして、チェッカー模様がボーダー状に入っている。



ペット様はお預かりしますぅ、とドアが閉められると、言葉通りに二人きりになった。


テーブルの上には、ほかほかと湯気の立つお料理が所狭しと並んでいる。

真ん中には真四角のケーキがあり、メッセージカードには、デカデカと『ご結婚おめでとうございます!』と書かれていた。




「館長さんは、面白いお方ですね」



椅子を引いてくれるアランに話しかければ、笑みを含んだ声が聞こえてきた。



「そうだな・・・だが、彼は、風の国出身の者で、強い男なのだぞ」