無謀すぎる。


アランのお小言を受けていると、急に視界が変わり風が肌に当たるのを感じた。

空には満天の星が輝き、月が煌々と輝いている。



「戻ったな・・・」



安堵したようにアランが呟くとほぼ同時に、聞き覚えのある声と幾つもの足音が聞こえてきた。



「・・・アランじゃないか!それにエミリーも」


「アラン様!!エミリー様!」


「アラン様、お怪我はありませんか!?」



レオナルドの驚いた顔が見える。

ウォルターのくしゃくしゃの泣き笑いの顔もある。

ルドルフの安堵した顔。

色んな顔がアランの傍に駆け寄ってきた。



「怪我はない、この通り平気だ。皆には心配をかけ、忝く思う」



エミリーを下ろし、ス・・と頭を下げるアランの肩を、レオナルドがポンと叩いた。

その表情は、満面の笑顔だ。




「いや、そんなことはいいのだよ、アラン。君に話すことがたくさんあるのだよ。君も、今までどうしていたのか聞かせてくれるかい?さあ、先ずは休もうじゃないか。食事もしてないんだろう―――・・・・」





大きな歓喜に湧き、ざわめくヴァンルークスの風の谷。

レオナルドが飛ばした伝令で差し入れられた大量の食糧と火を囲み、酒もふるまわれた祝宴は、朝日が昇るまで続いた。



燃え尽きた薪。

空になった皿と酒瓶。

土に直寝で毛布を被りいびきをかく兵士たち。

テント。


それらにゆっくりと朝日が差し込み始める。


アランは、その朝日を眩しそうに見た後、ギディオンのテントの中に入った。


そこには、簡易ベッドの上ですやすやと眠るエミリーがいる。

アランは、柔らかな金髪を指先でそっと梳き、すべすべの白い頬を愛しげに撫でた。

そして、手当てされガーゼで覆われた部分をひとつひとつ数えるように指を置いていく。



「すまぬな・・・エミリー、君のおかげだ。ありがとう――――」



額に落ちる豊かな髪を掻き分け、アランはそっと唇を落とした。