シャクジの森で〜青龍の涙〜

「ここは、どこなのかしら・・・」



エミリーは途方にくれていた。

気付けば、何故だか暗闇の中に、ぽつん・・と佇んでいたのだ。

見廻しても辺り一帯何も見えない。

足を動かせば草を踏むようなふんわりとした感触がし、肌には風が微かに当たるので、どうやら外にいるようだと分かる。

けれど。



「わたし、いつのまに外に出たのかしら・・・」



確か、アランに“眠ると良い”と言われてベッドの中にいたはずなのだ。

試しに頬をつねれば痛みを感じる。

足を踏み出せば自らの身体の重さを感じる。

この現実感は、これが夢ではないと言っていた。


まさか、今までのあれは、願望が見せた夢だったのだろうか。

へんてこ館長もルーベンの兵士たちも、アランのしたことも・・・・。


本当は、賊に担がれた路地に入ったあのときに眠らされていて、ニコルと一緒に連れ去られたのかも。

それでここは賊の住処で。

そうしたら――――



「――――まさか、ここは牢屋なの?」



この暗さは、地下なのだろうか。

それならば、ニコルが一緒にいるはずだ。

探さなくては、自分と同じ様に彼女も不安がっている。

一緒の部屋にいなくても、必ず近くにいるはず。



「ニコルさん?どこですか?」



エミリーは小声で名を呼び手探りで進みながら、足元にも気を配った。

もしかしたら、倒れているニコルを踏んでしまうかもしれない。



「あの・・・だれもいませんか?ニコルさん?」



声が暗闇に吸い込まれていく。

音は反響せず、とてつもなく広い空間に閉じ込められているよう。

ここには自分一人で、他には誰もいないのだろうか。

そして、地下でもないのだろうか。


強烈な孤独感に襲われ、恐怖に身が縮み、進むべきかどうか迷う。

けれど、耳が痛いほどの静寂の中、じっとしていると余計に恐怖心が湧いてきて、心が押し潰されそうになる。

いてもたってもいられず、とりあえずエミリーは歩き始めた。

時間も方向も分からないまま彷徨うように歩いていると、遠くの方から女性のものであろう声が聞こえてきた。

人が、いる。



「ニコルさんなのですか?」



“―――・・・では・・ませ・・―――”


途切れ途切れに聞こえる掠れたような声は、泣いている感じで、ニコルのそれとは違う。

どちらかと言えば、若くなく、歳を重ねたようなものだ。

自分と同じ様に賊に掴まってる人なのだろう。

エミリーは気を強く持って、声の元と思える方角に足を進めた。

すると、進む先に、ぼんやりとした白い人影が見えてきた。